確信犯



――まだまだ


気を失われちゃ困る






「“お父さん”。血縁が近いなんて今さらな理由で、母を棄てましたね」






人形のように頼りない男を放して。


母、雅の日記を取り出す。






『いつか、いつか』


そこには、母の願いがあった。


慣れない海外で。


愛する男を待ち続ける母。






最期のとき。


母、雅の精神と。


兄、匠の記憶を奪ったのは――






「白澤本家の娘と政略結婚して、欲が出ましたか?」






苦悶に歪む男の表情は。


何よりの、はなむけになる。






「正妻は子供が産めないと分かった途端、兄の匠を取り上げた上で、母を棄てましたね」





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