確信犯

❇~❇~❇



「貴方は何者ですか?」



喫茶店で、向かい合った男に問いかけながら。


私はお茶を飲んでいた。






掴みどころのないこの男は。


美濃部(ミノベ)、といった。






一ノ瀬さんがパートで勤める建築会社の、設計士。


白澤有雅会長の株が、3分の2の保有率から、3分の1になった。


そんな噂と共に、浮上した人間。






美濃部だけ、ソファーに躰を埋もれさせながら。


淡々と、食事を摂っている。






私の質問にも答えず。



「食後のコーヒーはサイコー」



などと呑気な言葉を呟いて、サスペンダーを引っ張った。






緊張感を感じさせない気配。


その事が却って、緊張を煽る。





< 286 / 500 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop