確信犯



匠の。


柔らかい髪が。


部屋の灯りを、受け揺らす。






「俺を見てもっと、そういうカオ、できねーの?」






過剰に。


反応した自分を。


視線を伏せて、戒める。






「美森――」






“名前”、を呼ぶ声は。


瞬時に脳髄まで、突き抜けて。






不都合な。


記憶の蓋まで、持ち上げる。






そこにいるだけで。


熱くなった、カラダ。






夜がくるたびに。


研ぎ澄まされて、鮮明になる記憶。






本当は。


あの夜が忘れられなくて。


まともに眠れなかった。






噴き出し始める、


感情のホコロビを。


処置しようとする手さえ、痛くて。





< 60 / 500 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop