確信犯
匠の。
柔らかい髪が。
部屋の灯りを、受け揺らす。
「俺を見てもっと、そういうカオ、できねーの?」
過剰に。
反応した自分を。
視線を伏せて、戒める。
「美森――」
“名前”、を呼ぶ声は。
瞬時に脳髄まで、突き抜けて。
不都合な。
記憶の蓋まで、持ち上げる。
そこにいるだけで。
熱くなった、カラダ。
夜がくるたびに。
研ぎ澄まされて、鮮明になる記憶。
本当は。
あの夜が忘れられなくて。
まともに眠れなかった。
噴き出し始める、
感情のホコロビを。
処置しようとする手さえ、痛くて。