私と上司の秘密
通話ボタンを押すまえに、着信音が切れた
ので、改めて私から課長にかけ直した。


ワンコールで、課長の電話につながり、

「もしもし。」

と私が言うと同時に、

「もう、仕事終わったか?」

と聞かれ、

「はい、今から清水君と食事するんです
けど。」

と答えると、少し無言の状態の後、

「アイツとか?
…、今すぐ帰れよ。」

突然、怒っているような口調で、話す。


『何で、そんなに怒っているのだろう…。』

理由が全然分からない。


「別に、ご飯、食べに行くだけなんですけど…。」

「それでもだ。」

『何か、納得できないような…。』


悪いことをしている訳ではないと思うが、
でも何故か、課長の言葉に従って、帰らなければいけないような気がした。


ためらいながらも、

「…、っはい。」

と、返事をしたが、

「…。」

通話が切れていた。



清水君の所にすぐ戻り、

「ごめんね。
折角誘ってもらったのに、ちょっと、都合が
悪くなったから、本当、ごめんね。」


誘ってもらったのに、申し訳ない気持ちで
いっぱいになる。

「気にしなくてもいいよ。
でも、本当は、先輩と一緒に食事するの、
楽しみだったんだけどな。
まあ、僕、一人で食べてくから…。」

「ありがとう。
おやすみ。」

そう言い残し、その場を去った。


「あーあっ、なあんだ、
やっぱり、いたんだ。
男…。」

悲しそうな目をして呟いた清水君の声は、
凛には、聞こえなかった。
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