私と上司の秘密
私は、圭介に抱かれたまま、じたばたもがいていた。


すると、洗面所に手を洗いに行っていた瑠璃がバタバタと小走りで足音をたてながら戻ってきた。


「ママだけ、ズルい!ズルいよ。
瑠璃もパパに抱っこして欲しい!」

と私を見上げて大声で叫びながら、私を今だ離してくれない圭介の足下で瑠璃が両手を伸ばしてせがんでくる。


「私はいいから、もう下ろして、お願い!」

と少し若干叫び気味になりながら、さすがに子供がいるから今度こそ下ろしてくれるとそう期待していたが、その考えは甘かった。


私を片方の腕で抱いたまま、一度しゃがんで反対の腕で、凛を持ち上げる。


瑠璃は、

「パパ、力持ちだね。」

とはしゃぎながら話すと、

「あ、たりまえだ!」

と瑠璃に話していた。


「皆、仲良し。
瑠璃もママも大好き!」

そう圭介は話し、私と瑠璃の頬に順番にキスをした。


勿論、瑠璃は当然喜んでいるが、私は子供じゃないんだしもういい大人なんだから、早く下ろして欲しい。


『それに、それに…、瑠璃の前で、私にキスをしないで欲しい…。』


今のこの状況は、流石にあり得ないと行動だと思う。


普段から、平気で瑠璃の前でも私に抱きついてきて、それにキスもしてくる圭介。


「また、瑠璃が幼稚園でお喋りするから、子供の前ではもう止めて。」

「じゃあ、二人きりになったらいいんだな。」

「そう言う問題とかでは…。」

意地悪な笑みを浮かべて呟いた。


以前、家でのことを本当に幼稚園の先生に話していたらしく、おまけに、

「瑠璃のパパとママね、毎日、毎日、
チュッチュしてるんだよ。
瑠璃にもしてくるんだよ。」

と話していたらしい。

もう、流石に勘弁して欲しい…。


その時は、本気で幼稚園を変えようかと真剣に考えた。


「仲がいいんですね。」

と先生は、苦笑しながら話してくれたが、私の隣でたまたま一緒にお迎えに来ていた圭介は、そんな空気も全く読めず、

「はい、とっても仲いいんですよ。」

と、先生に無駄に笑顔を振りまきながら私の手を繋いで、素直に答えていた。


本当に正直に答えていたけど、間違ってはいないけど、…けど、恥ずかしいから、もう勘弁して
欲しい。
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