唯一奇譚
花見小路から安井金毘羅宮を抜けて、男はどんどん進んでいく。特に隠れているわけでもないのに一向に気づく気配もないし、鈍い奴。
心の中で罵っていた事の罰が当たったのだろうか。
二寧坂の入り口に辿り着く、というところで男を見失ってしまった。
けどおかしいなあ。ここで見失うってあり得へん
頭を傾げながらぺたぺたと裸足で歩く。冷静になってみたらこれ恥ずかしいな。
立ち止まって下駄を履く。
ゆっくりと横を向くと店と店との間に暗い小道があって、その先がぼんやりと明るい。
私は恐る恐るその小道へと入っていった。