「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「セス……?」

しばらく続いた沈黙に耐えかねたようにライアンが声をかけた。



「ライアン…俺にはやらなきゃならないことがあるんだ。
実は俺…今、友達を探してるんだ。
その途中でわけもわからずこんな所に連れて来られた。
そいつは、多分、俺と間違えられてかどわかされた。
……俺はどうしてもそいつを助けなきゃならないんだ…」

二人の間に再び沈黙が流れた。



「……そうか、わかったよ……」

「……だけど……」

落胆したライアンの声に、セスの声が重なる。



「ライアン、俺の話はまだ終わっちゃいないぜ。
……そいつはきっと待っててくれる。
クールな振りはしているが、心の中は温かい奴なんだ。
だから、俺があんたの申し出を断って来たって知ったら、きっと怒る…
いや、顔には現さないかもしれないが、心の底できっと怒ると思うんだ。
……ライアン、俺に国のためだとか、王様を助け出す手伝いなんてたいそうなことが出来るかどうかはわからない。
でも、やらせてくれ。
話を聞いてしまった以上、なにもしないでいるなんて俺には無理だ。」

「ありがとう!セス!
感謝する!
それじゃあ、早速、今夜決行だ!」

「こ…今夜?
それは急過ぎないか?」

「ぐずぐずしてたら、ラーシェル様の身の上が危ない。
急がないとな…
とにかく、詳しい話は後で…今はしばらく身体を休めといた方が良い。
……セス、本当にありがとう!」

その言葉を最後に、壁の穴は閉じられた。



(……えらく気の早い奴だな。)

苦笑いを浮かべたセスは、冷たい壁に背中を預けた。



やがて、夜が更け、あたりが静かになった頃…
ライアンからの指示を待つセスの耳に、牢の扉の鍵がはずれる音が響いた。



「誰だ…?」

思いがけない出来事に、セスは低い声を投げかけた。



「心配するな。
僕だ。ライアンだ。
そんなことより、早く…!」

隣の牢にいた筈のライアンが自分の牢の鍵を開けたことに、まだ得心がいかないセスは、どこかすっきりしない気持ちを胸に抱きながらも、ライアンに促されるまま牢を出た。
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