「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「なんだ、金が欲しいのか…
しかし、金などあっても修道女のおまえが何に使う?
おかしいではないか…」

「そ…それは…
確かに私は神に仕えることを志し、この道に入りました。
しかし、どれほど祈った所でこの世からは悲しみも苦しみもなくなりはしません。
この世を良くするのも人々を幸せにするのも、それは神などではなく金であり権力であるということが私にもようやくわかって来たのです。
この国の国王も、お妃様がお亡くなりになられてからはまるで腑抜けのようになってしまわれた。
あのような方にこの国を任せておいたら、万一、隣国に攻め入られた時どうなることでしょうか?」

シャーリーは、神や王を悪く言うことに心を痛めたが、ここで大臣に怪しまれては元も子もなると心の中で詫びながら、気丈にも咄嗟に思い着いた言い訳を話し終えた。



「よくもそんなことが言えたものだな。」

大臣は口ではそう言いながらも、その顔はとても満足そうなものだった。



「皆、公には申しませんが心の中ではそのように思っております。」

その言葉に、大臣はさらに気を良くしたように、にっこりと微笑んだ。



「……ならば、シスター長などとは言わず、他のものを目指してはどうだ?
そんな鬱陶しい修道服など脱ぎ捨てて、色鮮やかなドレスをまとい、きらびやかな宝石を身に着けたいたいとは思わんか?
広い屋敷に住まい、うまいものを食べ、毎日、面白おかしく暮らしたいとは…」

「それは……もちろんそう思います。
こんな死人のような服、もう飽き飽きしております。
私も若い娘、美しいドレスを着てみたい…宝石を着けてみたい…!
……しかし、どうすればそのようなことが…」

おずおずと返事をしたシャーリーの言葉に、大臣の口端が不気味に上がる。



「そうだな…おまえは意外と可愛い顔をしておる。
それに、気の強い所も面白い。
……わしも立場上、おまえを妃にというわけにはいかんが…
側女として可愛がってやることなら出来るが…どうだ?」

まとわりつくような大臣の視線に、シャーリーは込み上げる吐き気を懸命に堪え、作り笑顔を返した。



(この男…すでに国王にでもなったつもりなのね…
それにこんな年で側女だなんて…気味の悪い……)

考えれば考える程、シャーリーの胸のむかつきは酷くなる。
しかし、それを無理に押さえこみ、シャーリーは平静な声で答えた。
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