「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「え…えぇ…
だいぶ良くなってましたよ。
まだ一人で立ったり歩いたりは出来ませんが、最近は食欲も出て来たということです。
あんな酷い怪我を負ったのに…回復できたのは、診療所の人達と本人の強い意志の賜物でしょうね。
まだ寝たっきりだというのに、あの人、今にも起き上がって戦いに行きたいような口ぶりで…陛下の救出のことも涙を流して喜んでいました。」

「そうか…あいつ…
順調に回復してるんだな…良かった…本当に良かった…」

ギリアスは、瞳を潤ませ唇を噛み締めた。



「ご苦労だったな。
君も、風呂を使わせてもらえ。
生き返った気分になるぞ。」

「そういえば、なんだか皆さんすっきりして…」

ライアンは、セスやギリアスの顔をあらためて見直した。



「久し振りの風呂だからな。
そう熱い湯ではないが、ここには高級な石鹸もあるぞ。
皆、気持ち良かったのか、すぐに眠ってしまった。」

ギリアスはそう言いながら、部屋の片隅で眠る兵士達に視線を移した。



「陛下もつい先程眠られた。
風呂をすませたら、明日の計画を話そう。」

「ギリアスさん、ライアンには俺から話しますから、あなたもお休み下さい。」

「そういうわけにはいかんさ。
ライアン、とにかく早く風呂へ。」

「は、はい。」

慌てて浴室に向かったライアンを見送ると、セスがギリアスになにげなく話しかけた。



「ギリアスさん…ターニャ様のお話ですが…
その……ルシアン様が、天界人だというお話をあなたはどのようにお考えですか?」

「そうか、君は半信半疑なのだな。
確かにそりゃあそうだ。
あんな夢みたいな話…普通は誰も信じやしないだろうな…
だが…私は信じている…
いや、嘘だと感じなかった。
ルシアン様は、最初、言葉がおわかりにならなかったんだ。
なんらかの事故にあって記憶をなくすということがあるという。
その中には、言葉までも忘れてしまう場合もあるらしい…しかし、ルシアン様は言葉をお忘れになったのではなくおわかりにならなかったんだ。
だから、どこか遠い異国の者かとも思われたが、結局の所、そのことは最後まではっきりしなかった。
今にして思えばきっとそれはルシアン様が天界人だったからなんだ。
だが、そんなことよりもなによりも、ジュネ様やラーク様の背中に翼があったこと…
それが、なによりの証拠なのではないかと思う。
陛下のお話によると、お二人の翼は背中の肉を破り、血を流して出て来たのだと言う…赤い色はきっとお二人の血肉の色だったんだろう…それなのに…」

ギリアスは悔しそうに拳を固く握り締めた。
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