「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「ギリアスさん……」

「……セス…なぜ、人は一部ばかりを見てしまうのだろうな…
たとえどんな奇妙な出来事があったにしても、それが本当はどういうことなのかを正しく判断するのはその人の全体を見るべきではないだろうか?
今までのジュネ様やラーク様…お二人はまだ子供だったから、陛下やルシアン様の人となりを判断すれば、そのお子様であられるお二人が悪しき者であろうはずがない。
この国は今まで他にはない程、平和で豊かな国だった。
それをずっと守って来られたのは、王室の方々のおかげではないか。」

憤りをぶつけるように、ギリアスは激しい口調でそう話した。



「一部だけを…」

ギリアスの言葉は、セスの心にぼんやりとした明かりを灯した。
はっきりとしたんものではなかったが、セスが心の奥に隠している何かをほのかに映し出すような…そんなどこかもどかしい気持ちに、セスは歯噛みする。



「セス…どうかしたのか?」

「いえ……なんでもありません。
でも…俺も、なんとなく信じられる気がします。
ルシアン様が何者でどうしてこの国に来られたのかはわかりませんが…
天に昇って行かれたお子様達が、悪い者だとは俺にも思えません。
舞踏会で大臣の正体が暴かれ、そして、皆の目が覚めれば、陛下もお元気になられてまたこの国を盛りたてて下さるのではないでしょうか?」

「……時間はかかるかもしれないが、皆で陛下をお支えすれば、きっとそうなるだろう。
セス…君にも頼むぞ。」

セスの肩に手を置くギリアスに、セスは曖昧な笑みを返した。



(この国のことは気になるが…
俺は、フォルテュナを探しに行かなきゃならない…
……あと少し、待っていてくれよ、フォルテュナ…!)

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