「異世界ファンタジーで15+1のお題」四
「危ない!」

ギリアスがすかさずラーシェルの前に立ちはだかり、火の玉を斬り付けた。
火の玉を斬った刃は真っ赤になり、どろどろと溶け始め、ギリアスは思わず剣を投げ捨てる。
落ちた火の玉は絨毯をなめるように凄まじい速さで燃え広がっていく。



「ラーシェル様、こちらへ!」

ジョーイがラーシェルを扉の方へ誘導した。
ターニャは、燃える炎に氷の塊を投げ付け鎮火させると、ラーシェル達に続いて広間の外へ駆け出した。

広間の外では、ごった返す客達を城の外へ誘導するため、セス達が奔走していた。



「慌てないで!
ご婦人やご高齢の方を先に行かせて下さい!」

「さっきのは何なんだ!?
ラーシェル様はご無事なのか?
僕達にもなにか出来る事があれば言ってくれ!」

「はい。ここは俺達だけで大丈夫ですから、お客様達をどうぞ外へ…!」

ラーシェルのことを応援しようとしてくれている者達がいることに、セスは希望を感じた。



(そうだ…この国はきっと立ち直る。
元の平和な国に…!)



その時、ラーシェルと兵士達、それに続いてターニャと二人の弟子達が姿を現した。



「皆さん、離れて!
ここからは私達に任せて下さい。
あなた方は決してあの化け物には近寄らないでそちらに隠れていて!
あいつは思ったよりも力があるわ。
とても危険です!さ、早く!」



ターニャに言われるまま、兵士達は建物の影に身を潜める。
三人は、まるで囮になるように中庭の中央に身を躍らせた。
そんな時、みしみしという音と共に、大臣だった化け物が扉を突き破り姿を現した。
その姿は、広間にいた時よりもずっと大きくなっていた。



「あ……あれは…ま、まさか…!」

客達を外へ誘導し、中庭に戻って来たシスター・シャーリーは、建物の影から垣間見たおぞましい姿にそのまま言葉を失った。
顔色は血の気を失い、シスター・シャーリーの身体は今にも倒れそうにがたがたと小刻みに震える。



「シスター・シャーリー!」

セスは声を潜めて彼女の名を呼び、彼女の手をそっと握り締めた。




「大丈夫ですよ。
ターニャ様にまかせておけば…
後少しです…後少しで、すべては終わりますから…
大丈夫です。
大丈夫ですからね。」

セスは、そのままシスター・シャーリーの手を優しく握りしめていた。
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