イージーラブじゃ愛せない



「……今、なんつった?」


8月も中旬に差し掛かろうという頃。一緒に飲みに行った優吾の口からは言い難そうに、けれどハッキリと嫌すぎる話が告げられた。


「だから……柴木ちゃんの引越し先、成瀬さんと同じマンションなんだって」


グラスを握りしめたままボーゼンとする俺に、優吾はりんりんから聞いたと云うその成り行きを教えてくれた。


「別に、付き合ってるとかそういうんじゃ無いみたいだよ。柴木ちゃんが物件探してるの知って、たまたま自分の住んでる部屋の隣が空き部屋だったからって、紹介してくれたみたい」


だからって。そんなの、もう付き合ってるも同然じゃん。成瀬さんだよ?胡桃と寝た男だよ?そんなのもう絶対――


頭を抱えてテーブルに突っ伏してしまった俺の耳に、優吾が溜息を深く吐いたのが聞こえた。


「そんなに好きなのに、どうして別れたの」

「別れたんじゃねー。俺が一方的にフラれたの」

「フラれる原因作りまくってたクセに」


優吾は呆れたようにそう言うけどさ、俺は未だによく分かんないよ。胡桃があの日あんなに怒った意味も俺に愛想を尽かした理由も。
 
< 165 / 245 >

この作品をシェア

pagetop