イージーラブじゃ愛せない


「そうです、もうじき4年目ッス」


ガサゴソとエアークッションをせわしなくゴミ袋に詰めつつ答えると、星野さんは段ボールをまとめながら

「来年、研修受けるのか?」

そう俺に聞いてきた。


うちの店は勤続3年以上から登用研修を受けられるようになる。簡単にいうと出世への道、ね。これを受けて試験に合格すると、やがて他の店舗への移動辞令が出される。そうやって数年色々な店で経験を積まないと昇格は出来ない。一生平社員のまんまだ。

ただ、事情があって移動が出来ない人や、管理職を望まない女子社員なんかは受けない事もあるけど。まあ大体の男性社員は勤続4年目になれば研修を受ける。


もちろん俺も。ずっとこの会社でやっていくつもりだしね。


「はい、受けるつもりッス。俺も早く星野さんみたいに出世したいし」


調子のいい事を言った俺に、星野さんは手にしていた段ボールでベチンと頭をはたくと

「お前はお調子モンで馬鹿だけど華があるから催事には向いてるよな。試験受かったら早く辞令出るように俺からも口添えしてやるよ」

いかつい顔のまんまそんな優しい事を言うもんだから、感激して胸がジンジン熱くなる。
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