恋するリスク
動物園を出ると、あたりは薄暗くなっていた。

佐藤くんは「少し離れてるんですけど」と言って車を走らせ、夕飯は古民家を改装したような佇まいの、創作和食のお店に連れて行ってくれた。

隠れ家っぽい様子から、いろいろお店も調べてくれたんだろうなと思うと、じんわりと気持ちがあたたかくなる。

雰囲気のいい個室で味わう繊細な料理たちは、どれもとてもおいしくて、何度もほっぺたが落ちそうになった。


(佐藤くんと一緒だから、また一段とおいしいって感じるのかな。)


そんな満たされた気持ちで食事を終えると、時刻は20時を過ぎていた。

お店の外に出たところで、私は佐藤くんにお礼を伝える。

「おいしかった!ごちそうさまでした。」

「本当においしそうに食べてましたね、藤崎さん。」

「だって、本当においしかったから。」

楽しくて、おいしくて、幸せで。

あっという間に時間が過ぎてしまい、私は切なくてたまらなかった。

駐車場に向かいながら、彼はそんな私に視線を向けた。

「帰り、どこか寄るとこありますか?」

「・・・ううん。大丈夫。」

問いかけに、少しだけ悩んで答えたけれど、私は、すぐさまそれを後悔した。


(用事・・・なんでもいいから、何か作ればよかったかな・・・。)


そうすれば、少しでも長く、佐藤くんと一緒にいることができたのに。

そんなことを考えながら駐車場を歩いていると、私は佐藤くんの車をすぐに見つけた。

彼の車はもう、一目で探し出せてしまう。



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