恋するリスク
「合鍵、まだ持ってるし。」

「・・・!」


(そうだ・・・。)


フラれてから、とにかく西村先生のことは忘れたくて。

出来るだけ、関わりたくない。

ただひたすらにそう思っていたから、合鍵のことも・・・忘れていた。

引き出しにしまったままの、西村先生の家の鍵。

私の家の鍵も、西村先生が持ったままだ。

大事なことなのに、考えたくなかったし、思い出さないようにしていたのかもしれない。

でも・・・。

今好きな人の前で、佐藤くんの前でこんなこと・・・昔の関係を証明するようなこと、わざわざ言葉にしなくてもいいのに。

胸が苦しい。

私は握られたままの手首に気づき、ぱっとそれを振り払う。

「・・・返してください。私のも、今度返しますので。」

「断ったら?」

「えっ・・・!」

「断ったらどうする?」

西村先生の強い瞳に見つめられる。

心臓が、激しく脈打つ。

「えーっと・・・。」

そこに、間の抜けたような百瀬先生の声がした。

全員の顔を見比べている。

事態を理解できず、困っているようだった。




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