恋するリスク
カラリと笑顔で言われたので、それ以上は何も言えなくなってしまう。

話題を変えて、私は尋ねる。

「・・・今、帰るところ?」

雰囲気からして、用事は全て終わった様子。

「はい。」

「じゃあ、1階まで一緒に行こ。私、栄養部に行くんだ。」

そう声をかけて、2人並んで廊下を進んだ。

職場で、微妙に離れて歩くその距離感が、なんだかとてもくすぐったい。

エレベーターホールに着くと、ここもやはりがらんとしていた。

午後になれば、面会の方々でにぎやかになる場所だけど。

ほどなくして8階に到着したエレベーターのドアが開くと、二人で中に乗り込んだ。

行先ボタンを押してドアが閉まると、佐藤くんは私にキスをする。

「!!」

突然のことに、一瞬で身体が硬直した。

急激に体温が上昇し、頬が火照っていくのがいやなほどわかる。

「ダ・・・ダメ!職場でキスとか・・・こういうのはダメ!!」

唇が離れると、私は佐藤くんを見上げて抗議する。

「誰も見てないよ。」

私の顔を覗きこんで、甘い声音でそう言うけれど。

「見てなくても!病院の中ではダメなの!!」

もう一度そう抗議すると、彼はさみしそうに額をかく。


(もう・・・。そんな仕草されると、ちょっとキュンとしちゃうじゃない・・・。)


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