恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
その後、会社まで課長は無言だった。私も化粧を途中にするわけにもいかないので、簡単に仕上げいたたまれない空気の中に身を置いていた。
「ありがとうございました」
会社の自社ビル地下の駐車場。
お礼を言って車を降りようとしていた。
「待て」ガシッと掴まれた腕。
「うわっ、何です?」ドアに向けていた顔を課長へ向けた。
「山田、化粧がムラになってるぞ」
「え? どこです?」
「ここだ」鼻の下に指を当てられた。
上唇の上部分を課長の指先が、そっと撫でるように動いた。
「キスもしないうちから、そんな所がムラになってるなんて……キスしたらどうなるんだ?」
「しませんから、ご心配なく」
「そうだな、お前にキスする物好きは俺ぐらいか」
「そんなことありませんよ!キスする相手位いくらでも いますよ。私モテるんですから」
ついムキになっていた。すると、課長が眉根を寄せて怒ってるみたいな顔している。
「……神島のことを言ってるのか?」
「え?」
勝手に誤解する課長。
「山田、これだけは言っておく。神島は……お前が手に負える相手じゃない」
「そんなの勝手に決めないで下さい」
私をみて課長が苦笑いする。
「……まあ、いい。山田、先に上がれ」
「はあ、わかりました。では……」
車を降りて、勢いよくドアを閉めた。