恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「病人の手を握る。これ、当たり前な状況でしょ?」
ニコッとする神島課長。
「いや、それは……親しい間柄の場合かと……」
「そっか。間違えたね。ごめんごめん」
ーーー軽い。噂どおりの軽さだ。
体を起こすと、私の背中を支える神島課長。
「すみません……あの、大丈夫ですから」
「送るよ。しんどそうだし。俺、車だから。それとも他に送ってもらうあてがあるわけ?」
「え、あ…タクシー呼びますから」
「もったいないよ。俺が連れてくよ。失礼して…」
布団をはいだ神島課長は、わたしの膝下に手を入れてきた。
「きゃああああああ!」
信じられないことに私は、軽々と神島課長にお姫様抱っこをされていた。
落ちないように神島課長の首にしがみついた。
「お、いいねぇ。俺に頼る感じがそそられる」
変な事を言い出す神島課長が産業医にドアを開けさせて、お姫様抱っこのままで廊下に出た。
「神島課長! こんなの困ります!」
「大丈夫だよ。終業時間はとっくに過ぎてるから」
「え、私……そんなに寝てたんですか?」
「そうみたいだよ。だから、心配しなくていいよ。……それとも……俺に抱っこされてる所を見られたくない人でもいるのかなぁ?」
意味深な質問だった。
ーーー見られたくない人なんか……。
わたしの頭に浮かんだ人の顔を慌てて消そうとして首を振った。
神島課長が歩くのをやめて立ち止まる。
「?」
前方に顔を向けると、そこには慌てて私が消したかった顔があった。