現代のシンデレラになる方法
紺色のワンピースにベージュのバッグ。
どれも先生が選んでくれたものだった。
食事会に指定された場所は、明治時代に創業されたという老舗の高級料亭。
もちろん、全室個室だ。
もう入った瞬間からこの場の雰囲気に飲まれかちんこちんに緊張する私。
先生のあとをついていくだけで精一杯だ。
着物を着た女性に案内されたのは、椿という部屋。
襖を開けられた先には、先生のご両親が待ち構えていた。
促されるまま、先生のお母様と思わしき女性の前に座らされる。
想像はしていたけど、刺さるような冷たい視線が両方から飛んできた。
「お名前はなんていうのかしら?」
「相澤ひなたです」
「あら、可愛らしい名前ね」
ふと笑うその女性。
綺麗な顔立ちだ。
立ち居振る舞い、一つ一つの仕草から育ちの良さが分かる。
「ちなみに大学はどちらをお出になってるの?今はどんなお仕事をなされているのかしら?ちなみにお父様やお母様はどのようなお仕事をなされているの?」
そして会って間もないというのに、封を切ったかのような質問責めに合う。
先生は苛立ったようにそれを窘めた。
「いい加減にしろよ。こんなことだろうとは思ったけどさ」
「先生、大丈夫です」
「いい、こんな質問答えることない」
そう言うけど、今逃げる訳にはいかない。きっと先生はご両親とこれっきり、そこまで考えているだろうから。
私のせいで親子の仲を断つなんてさせられない。
「私は大学は出ていなくて、高校を卒業して働きながら医療事務の資格を取りました。父は幼い頃亡くし、母子家庭で育ちました。母はスーパーで働いています」
「そうですか、それは大変苦労されたでしょう」
「い、いえ」
「可愛らしい方だから、いくらでも他にお似合いの男性がいらっしゃると思うの。別に貴之じゃなくても、ね?」
オブラートに包んでいるが、やっぱり認められないようだ。
「お互いふさわしい相手を選ぶべきだと思うわ」
そう言い終わらないうちに、先生が怒った時の低い声を出す。
「……ひなた、帰るぞ。立って」
促されるも、私は立ち上がれない。
ここで終わりにはさせられないもの。