現代のシンデレラになる方法
退職理由は、一身上の都合として詳しくは話さないつもりだった。
だけどあれだけ辞めろだとか言っていた事務長が、この期に及んで引き止めてきたのには驚いた。
『結婚しても続けられるだろう、なんだ子どもでもできたのか?それとも実家に帰るのか?急に辞められても困るんだよ』
いつものようにねちねち言われ、なかなか認めてもらえなかった。
そしてついに出た言葉が、君の代わりができる次の後任を探すのは大変なんだぞ。
なんて。
何?
サンドバッグの変わりはなかなか見つからないって?
一瞬、後ろ向きに捉えてしまったけど。
失言とばかりに顔を染めて、あわあわする事務長がなんだか可愛くてちょっと笑ってしまった。
少しは事務長に仕事を認めてもらえていたなんて、嬉しい。
本当、最後の最後になってだったけど。
あなたのことが怖くて病院に行きたくなかった日もあった。
だけど、誰よりも病院の運営に頭を悩ませ、考えていたのは事務長だった。
それも思えば、この土地にうちの中規模な病院が必要であるからこそ。
病院の経営だけじゃない、ここの地域住民にこの病院が必要だから彼はここまで厳しかったのだ。
それを知っていたから、辛くあたられても彼の下で働いてこれた。
だけどもうちょっと分かりやすくてもいいんじゃないの?
次の子にはもう少し手加減してあげて下さいね、そう言って彼と別れた。
そして退職日当日。
勤務終わりに、医事科で挨拶をし拍手で送られる。
頭を下げて出ようとしたところ、1人のスタッフに止められた。
実は今日、先生の退職日でもあった。