現代のシンデレラになる方法



手際の悪い後輩に変わろうとしたら、またもや東條先生がフォローしてくれた。

しかも、もたつく後輩に一切怒ることなく丁寧に教えながら。


「テストラング取って、チューブを着ける。で、蒸留水のボトルに加湿器のルートを刺す」

「す、すいません、ありがとうございます」


先生にそんなことをさせて、ましてや教わりながらって。

外科の先生は皆こんなに優しいのか、うちの脳外の医者が厳しいだけ?

いや、この先生が優し過ぎるんだろう。

しかも怖い位に冷静だ。

手際の良さもさることながら、そこが一番すごいと思う。

たいてい、急変時って生き死にに関わる大事な場面だ。

それこそ一分一秒を争う、少しでも対応を間違えたり遅れたりすれば命取りになるような。

それなのにこの先生はずっと冷静。

本当に若手の医者なのか疑ってしまう位。

急変時って、どれだけ経験を積んだ医者でも余裕がなくなることが多い。

それでよく看護師に八つ当たりするのに。


そんなこんなで、やっと呼吸器につけられるってなった時。

記録をしていた新人の渡辺さんが慌てた声を出す。

「せ、先生、レート伸びてきました」

それと同時に鳴るけたたましく鳴るモニターアラーム。

すかさず指示を出す先生、私は心マに入った。

「硫アト1A、IVして」

「尾川さん、アンプル吸って!」

私が促すと、尾川さんが救急カートから薬液を探す。

が、突然状況が悪化して慌ててるのか、なかなか見つけられない様子。


「もう、しっかりして!」

そう言って思わずはっとする。

私は彼女に追い打ちをかけるように怒鳴ってしまった。

この状況で絶対にやってはならないことだ。

完全に後輩を委縮させてしまった。

急変時にリーダーが冷静さを欠いて感情的になってはいけない。

そう一番やってはいけないことなのだ。

しんと一瞬、静まり返ると、間髪入れず先生が口を出した。



「俺が心マやるから、助けてやれ」

そう言って、先生は私の隣にくると変わって心マをしてくれた。

私は急いで救急カートから硫アトを取ると、シリンジで吸って指示通りIVしていく。


「すいません……っ」

そう言って謝る尾川さんの目は真っ赤だ。

今まで泣くのをこらえていたのだろう。



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