現代のシンデレラになる方法


「あ、東條先生、お疲れ様です。今日は本当にありがとうございました」

「お疲れ」

「本当に今日の当直が先生で助かりました」

私の顔とネームプレートを見て、先生は思い出したかのように言う。

「確か5年目だったか?俺と同期で入ってきたよな?」

「は、はい!」

覚えててくれたんだ……っ!

「新人に近い子達ばかりで、心細かったろうに。よく頑張ったな」

そう言ってぽんと頭に乗せられた手。
そのまま先生はエレベーターから降りて行った。

私も降りるはずが、動けなくなってしまった。

今まで我慢してた涙がぽろぽろこぼれてきたから。


余裕のない後輩2人。

私まで慌てたら2人が不安になる、と。

そう思って頑張って毅然に振る舞っていたが、本当は私もいっぱいいっぱいで。

怖くて怖くてたまらなかったのだ。


先生はあの状況の中で、そんな私の心情まで察してくれていたのだ。

それが嬉しくてしょうがなかった。


 
その日からだった、男の人は先生しか考えられなくなったのは。

こんな一声かけられただけで恋に落ちるなんて、単純過ぎるだろうか。

しかしこの片思いはもう2年続いている。





食堂でA定食が出てくるのを待っていると。

「先輩!」

そう言いながら、未だ脳外で頑張っている尾川が飛んで来きた。

あの頃まだ2年目だった尾川も今じゃもう4年目になる。リーダーも板についてきた頃。
今は違う部署で働いているが、今でも慕ってくれる可愛い後輩だ。

私はツキが回ってきたのか消化器外科に移動になって、東條先生と一緒の部署で働いていた。

尾川も、あの時フォローしてくれた東條先生の熱心なファンの1人だった。


「聞きました?東條先生の弟がうちに来るって話!」

声を張り上げて嬉しそうに言う尾川。

「えぇっ、本当?」

「研修で来るらしいですよー。噂ですけど」

きっとお兄さんに似てかっこいいんだろうなー、と想像を膨らませる後輩。





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