AfterStory~彼女と彼の話~
 私の首元を這っていた玲二さんの唇がパッと離れたので瞼をそっと開くと、玲二さんはスーツの袖口で自分の唇を拭っている。

「雨がやんだな」

 玲二さんが私から離れて運転席に座りなおし、私も起き上がって服装を整えて窓の外を見ると、あれだけ降っていた雨が止んでいる。

 コインランドリーから1組のカップルが出てきて、男性は片手にスーパーの袋を、もう片方は女性の手を握って、私たちが乗っている普通乗用車の前を横切った。

 危なかった…、キスをしているところを見られちゃったら流石にマズイ。

 でも少しだけ期待していた自分もいて、モヤモヤする。

「そんな顔をすんな」
「だって…」

 玲二さんが私の頭をくしゃっと撫で、私だけこんなモヤモヤしていて恨めしそうに玲二さんを見る。

「こんなところで悪かった。お前が覚悟が出来た時に触れる」
「……はい」

 いつか一線を超える日がくるけれど、それが私の気持ち次第なんだと理解して返事をした。

 普通乗用車から降りるとまだ道路は大きな水たまりがあり、突然降りだした雨の凄さが分かる。

 コインランドリーに入って乾燥機の側に行くと、蓋の上に乾燥機に入れたはずのタオルケットが綺麗に畳んであって、チョコ菓子が2つとメモ紙が1枚あった。

 玲二さんはメモ紙を手にとって、そこに書かれている文章を目で黙読する。

「このチョコ菓子、タオル借りた礼だってよ」

 玲二さんが私にほらとメモ紙を見せた。

「『大変申し訳ございませんが、タオルケットをお借りしました。お礼としてチョコを受け取って下さい』…、さっきコインランドリーから出てきたカップルですかね?」
「そうだろうな。濡れていないところをみると、もう一度乾燥したんだな。チョコはどうするか?」
「せっかくのお気持なので受け取ります。玲二さんも一緒に食べませんか?」
「分かった」

 私はチョコ菓子の一つを玲二さんに渡すと、私はチョコ菓子を頬張り、甘さが体に広がっていくのが分かり、荷物の片付けや仕事もあって、体も疲れていたんだなぁ。
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