AfterStory~彼女と彼の話~
2月14日、バレンタインデー。

チョコは溶けてしまうといけないから、S駅近くの角井百貨店で買うことにした。

バレンタイン当日とあって、お店の中は女性が多い。

「チョコ、買えるかな」

1階のバレンタインスペースを見て、南山にどれを贈るか迷ったけど、"アルコール入りチョコ"というのが良さそうに感じたのでお店を探してみようと、受付の人に聞いた。

「あの~、すいません…」
「いらっしゃいませ。いかが致しましたか?」

大野と書かれたネームをつけた受付の女性に売り場を教えてもらい、早速売り場に行ってチョコを買う。

ラッピングは派手さを無しにしてもらい、赤い箱に入れてもらった。

「喜んでくれたらいいな」

チョコを受け取った時の南山の表情を予想してみて、1人でニヤニヤしてると、スマホに着信があり、通話を押した。

「もしもし」
『沙紀、俺だ』
「俺って言う人は知りません」
『ちっ…、彰だけど』

仕事中は苗字で呼びあっているけど、名前で呼ばれるのは完全プライベートという証拠だ。

もしかして、またキャンセルになるのかなと不安が過る。

「彰、どうしたの?」
『実はさ、窃盗した男を捕まえたからS駅近くの警察署に行く』

南山らしいけど警察署に行くとしたら終わるのに時間がかかるし、映画を見れないし、チョコも渡せないかもと、不謹慎ながらそう思った。

『沙紀にも警察署に来て欲しい』
「私も?」
『窃盗した男が盗った荷物さ、俺の小学校の先輩の彼女の物で、沙紀に彼女のフォローを頼みたい』
「うん、それなら任せて!今から行くからちょっと時間がかかるかもしれないけど、なるべく早く着く努力するね」
『ありがとな』

通話を終えると、警察署に向けて歩きだした。

こうして南山が頼ってくれるのがとても嬉しくて、さっきまで感じていたモヤモヤが何処かに飛んでいっちゃったから、私って単純かも。
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