星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】


「託実?
 
 糸が次から次へと
 君を縛り続けるのかな?

 君自身がそれを望み続けるから。

 君と理佳さんを繋ぐものは
 何時から罪悪感だけに
 なってしまったの?

 罪悪感に自ら縛られ続けて
理佳さんを思い続ける?

 その時点で、歪み続けているのは
 君も知っているはず。

 鋏をかしてあげるよ」


兄さんの声が静かに聞こえて、
俺に鋏を握らせる。



「託実が糸が絡んでいると思う場所に、
 鋏を入れるといいよ」


俺自身が……アイツとの時間に
鋏を入れる?


切り捨てるのか?

嫌っ、新しく始めるために
この時間を望んだ。
 

もう誰も……百花も理佳も
悲しませないように。





そう……。




何もない空間。


ゆっくりと空を切る鋏の音色が
空間の中に響いていく。


俺自身に絡みつく糸を
丁寧に切り落とすように。


真実を歪めてしまう
糸を自らの思いで切り落としていく。




そして深呼吸を繰り返して、
目の前のベッドへと横たわり、
目を閉じて……ゆっくりと時間を遡っていく。





裕真兄さんの声に
誘導されて導かれながら。

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