星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

そう。


理佳にもそうだけど……俺は百花にも
天使の羽根を感じた。


そんな懐かしさもあって……惹かれて行った。



知れば知るほどに真っ白なその羽は
傷ついて血に染まっているのを感じた。



天と言う星空に焦がれながら
地と言う場所に自らを縛りつけ、
自らの羽を大空を飛べぬように
切り落として在り続けるような。



そんな……風に映った。





「託実、もう過ぎたことを後悔しても
 悔やんでも、同じ時間は帰らない。

 過ぎてしまったことは、
 その瞬間の選択した心・気持ちを
 ちゃんと大切にしてあげるんだ。

 そしたら、そこに悪意がない限りは
 罪悪感を覚えることはないんだよ。
 
 さぁ、託実。
 長い時間が始まるよ。

 百花ちゃんを迎えに行こうか?」







救急車のサイレンが
近づいてくる。





兄さんと共に自分の足で、
その場所へと向かう。




ストレッチャーに横たわる百花は、
連絡を貰ってしたくを整えていたスタッフたちの手によって、
処置室を通り越してオペ室へと運ばれていく。



「大丈夫。

 託実は信じて待ってるといいよ」



通り過ぎる間際、
裕真兄さんが耳元で囁いていく。



「さて、託実はこっち。
 
 この後のことを話し合おう。
 私の父が、待ってる」



オペ室のランプがついたの見届けて、
俺は裕兄さんと共に最上階の部屋へと向かう。





百花の為に、
今の俺が出来る全てで包み込む。





思いは一つ。




抱えきれぬほどの止まらない想いを
抱きとめながら静かに祈り続ける。









……百花……、
帰っておいで。






……理佳……まだ……俺の傍から、
百花を連れて行かないでくれ。






……百花……。






< 159 / 253 >

この作品をシェア

pagetop