星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】




体はLIVEの後で心地よい疲労感が
たまっているのに、未だ睡魔も襲ってくる気配はない。



隆雪の病室から一つ下の階に移動して、
東館から、西館への連絡通路を渡っていく。


そして、そのフロアの入院患者たちが眠る
病棟内をゆっくりと歩いていく。



廊下に響き渡る足音。



ようやく辿り着いた先は
505号室と書かれた誰も居ない病室。




この場所に……当時、親父の患者だった
俺の大切な人が過ごしていた。



理佳と俺が出逢った大切な場所。

アイツが旅立ってから、
この病室は、病室として使われることがなくなった。

親父たちの計らいなんだと思う。

誰もいない病室に一人立ち入って、
誰もいないベッドマットに手を触れる。



彼女がこの場所から旅だって八年。



八年と言う月日が流れても、
この場所での思い出が、俺から消えることはない。


八年前迄、此処で眠っていた俺の忘れられない人の
思い出が詰まったこの場所。


指先から伝わる感触は冷たく、
もう彼女を感じることは出来ないけれど
確かに……彼女はこの場所で闘病生活を送りながら
精一杯生きていた。


理佳との思い出が沢山詰まった部屋。
隆雪とAnsyal結成を決断した大切な場所。



理佳の死は、俺的には受け入れてる……。


だけどアイツの存在が恋しくなったら、
俺はふらりと、この部屋を訪れて疲れた体を休める。

誰もいないベッドに座り、
アイツが見ていた病室からの景色を見つめる。

ぼーっとした静かな時間が流れていくのを感じながら、
そのままベッドに体を預けていった。




< 16 / 253 >

この作品をシェア

pagetop