星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

1.姉妹の架け橋 -託実-



交通事故以来、ずっと意識が戻らなかった
百花の意識が回復したのが五月のGW。


GWは……遠い昔、理佳を初めて親父たちの協力を得て
伊舎堂の別荘近くの海へと連れて行った季節。


そんな季節に……、
百花は再び俺の前で笑いかけてくれた。



百花は百花。

理佳は理佳。




俺の中で大きくその存在を変えた姉妹。


ずっと疑心暗鬼だった心に、
光が差し込んでから、俺の中の迷いはない。



百花の意識が回復するまでは……っと、
事務所に考慮して貰って、病室で出来る作業を中心に行っていた俺も
徐々に活動範囲を広げていく。



狭霧のプロデュースの件。


怜さんの追悼LIVEツアーへの、
時間調整をしながらの参加。


そして過去に何度かプロデュースを手伝った
同じ事務所のYUKIの復帰に向けての準備。



そう言った仕事も徐々に増やしていく。




百花を幸せにすると俺自身に課したのだから、
俺も大黒柱として動き出さないといけない。



俺が仕事で病室に顔を出せない間は、
裕兄さんか、裕真兄さん。


学校に復学した雪貴と唯香ちゃん。


それに親父とおふくろまで、
百花の病室へと押しかけて、俺にメールや電話をかけてくる。



俺にとっての強力なサポーター。



親父たちの許可を貰って、持ち込んだキャンパスは
百花によって、ゆっくりと完成に向けて一筆一筆色をのせられているみたいだった。



「お疲れ様です」



その日、一週間ぶりに詰め込んだ仕事から解放されて
事務所を後にしようとする俺に、宝珠姉さんが近づいてくる。




「託実、お疲れ様。
 はいっ、近いうちに私も顔を出すわ。

 託実の従兄弟として、
 後はAnsyalのビジネスパートナーとして。

 もう少ししたら、DTVTの次の公演の打ち合わせにウィーンに行かないとなんだけど
 それまでに顔が出せたらいいと思っててよ」

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