星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】


「私は嬉しいです。

 託実との間の赤ちゃんだし……、もうすぐお姉ちゃんの命日だから
 お姉ちゃんが帰って来てくれたような気がして。

 ずっと目が覚めなかった間、お姉ちゃんと沢山話してて
 お姉ちゃん、もうすぐ帰るからって笑ってたから。

 だから託実が許してくれたら、育てたいです。
 順番通りには行かなくなっちゃったけど」


そうやって答えると、裕真先生は「避妊はしてたの?」っと
会話を続ける。


「コンドームは使ってました。
 でも……ここに新しい命が来てくれたから」

「そう。
 だったら皆に、ちゃんと嬉しい報告が出来るね。

 そうと決まったら、宗成叔父さんたちとも話をつめないといけないけど
 結婚式も、来年とは言わずに秋くらいまでに出来ればいいだろうね。

 その辺りの手配は任せてくれるといいよ」


そう言うと裕真先生は、産婦人科の先生に声をかけて
私を唯香の待つ部屋へと連れて帰った。


「百花?どうだった」


部屋に戻った途端、開口一番に紡がれた唯香の問いに
にっこりと微笑んで、「赤ちゃん、居るみたい」っと呟いた。



その後は慌ただしくて。

託実に報告して、実家のお祖父ちゃんたち家族にも伝えて
託実の御両親にも報告。


怒られるかなって思った時もあったけど、
幸いなことに、皆、赤ちゃんが宿ったことを凄く喜んでくれたのが救いだった。


急ピッチで、結婚式の手配が進められて
11月3日、神前悧羅祭で、Ansyalの一日限定復活が決まった為
その前の週になる10月下旬に結婚式が設定された。


姫龍さんと一緒に、ウェディングドレスの制作
着物の確認などを行いながら、慌ただしい日々を過ごすようになった。


9月。

二学期になると、再び唯香も仕事が忙しくなって来たのか
電話が繋がらない日々が続いた。


唯香のことを気にしつつも、自分の結婚式の準備に追われていたある日
マンションで一緒に、結婚式の準備をしていた託実の携帯に、
十夜さんからの連絡が入った。


「わかった。
 十夜、連絡有難う。

 すぐに向かうよ」


十夜さんからの電話に出た託実は、少し言葉を交わして告げると
電話を切って、私の方に向き直る。



「百花、今から出掛けたいところがある。
 俺たちの監視ミスだ」


託実はそう言って、まずは私に謝った。

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