星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】




会場近くのパーキングに車を停めた俺は、
そのまま花屋で花束を作って貰うと、そのまま会場へと向かった。


その場所に展覧会開催中は百花も手伝いに顔を出すことになっていた。




花束を抱えたまま、その会場となる櫻柳のさくらホールへと足を踏み入れる。

一階のエントランスには、それぞれの催し会場に案内しやすいようにスタッフが立って
ホール内の来客に声をかけていた。



「いらっしゃいませ。
 本日はどちらの催しにお越しでしょうか?」

「櫻柳会長主催の展覧会へ」

「有難うございます。
 本日の展覧会は初日の為、只今の時間は招待制となっておりますが
 招待チケットはお持ちでしょうか?」

「御心配には及びません。
 何階でしょうか?」

「右手側奥のエレベーターより最上階へとお願いいたします」


そのまま誘導スタッフと別れて、俺は指示されたエレベーターから最上階を目指す。

ガラス張りのエレベーター。
外の景色を覗きながら、エレベーターが浮遊していく。

次第に加速されたスピードが、緩やかになっていくとスーっと静かに止まった感覚が体に伝わってくる。


到着音がチンとなり、静かにエレベーターのドアが開くと
丁寧にお辞儀されたスーツ姿のスタッフによって迎え入れられる。


「いらっしゃいませ。
 恐れ入りますが、受付での手続きをお願いします」


ジャケットの内ポケットから、喜多川会長より預かっていた
招待状を手を出すと、すぐにスタッフが奥へと消えていく。


暫くして姿を見せたのは、百花と喜多川会長、
そして画廊のスタッフでもある相本さんだった。



「おぉ、託実くん。
 仕事が忙しい中、悪かったな」

「いえっ。
 招待チケット有難うございました。
 百花が渡してくれると思っていたので、前日まで貰えなくて焦りました」


そうやって会話をしていると、
俺の隣では百花が『仕事だと思ったから』っと声にはせずに口の形を動かす。



仕事だと思ったからって、確かに仕事だったけど
それくらいは俺も調整するよ。


百花の絵が見たかったのは、
俺の本心なんだから。



「百花、体調の方は?」



百花の姿を見た途端に、小さな声で百花に話す。


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