星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】



「百花に気を使わせるなんて俺もまだまだってことだな。
 
 とりあえず唯香ちゃんや、満永の家、喜多川の家に連絡するなら連絡していいけど
 病院には俺が連れて行く。

 もうマンションの近くまで帰ってるから。

 後、兄さんたちにも連絡入れておくから」 

「うん。

 託実……いつもごめん」

「百花、そんなの気にしなくていんだよ。
 後、出来ればごめんじゃなくて、有難うの方が嬉しいかな。

 そういう時、『ごめん』って言うのが口癖なのは
 理佳も百花も一緒なんだな」


そう言いながら託実は笑う。



昔、託実がお姉ちゃんから初めて貰った最初で最後のバレンタインチョコ。


そのチョコにお姉ちゃんが書いたチョコ文字のメッセージも、
大きなカタカナ文字で、ゴメンネって綴られていたこと。

そしてその下、申し訳程度に読めるか読めないかの小さな文字で綴られたアリガトの四文字。


私との会話から、そんなプレゼントに込められていたメッセージを思い出したっと
託実は、私の知らないお姉ちゃんとの時間を教えてくれた。



託実と電話で繋がってる。

そう思うだけで、一人でいた時ほど不安はなくて
やっぱり……託実の優しさに包まれたくなってる私自身に気が付く。




カチャリ。


何時の間にか玄関ドアをあける音が聴こえて、
電話越しではなく、ダイレクトに託実の声が聞こえた。





「ただいま。行こうか」




そう言って託実は私を支えるように
手を添えながら荷物をもってマンションを出ていく。

次に帰ってくる時は、ちゃんと家族が増えてるね。

そんなことを思いながら私は地下に停められている託実の車へと向かった。



託実の車に乗り込んで暫くすると、
また少し収まっていた痛みが増して来る。


そんな私の状態を気遣いながら、託実は車を運転しながら何処かに連絡していく。


すぐに病院の関係者出入り口に車が到着すると、
そこにはすでに連絡して駆けつけてくれていた、薫子先生たちが私を迎え入れてくれた。



「託実、百花ちゃんのことはちゃんと任せて
 貴方はやるべきことをしなさい。

 出産のタイミングになったら、ちゃんと連絡してあげるわよ」

「知ってるよ。
 じゃ、百花後で行くから。

 母さん、頼んだから」


託実と離れて私が向かったのは、
入院していた時と同じ、伊舎堂の関係者専用VIP ROOM。


その部屋には何時、
出産になってもいいように準備だけは整えられていた。
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