世界一遠距離恋愛
「透くん!」
三回間違えて違う人の病室を開け、花奏に引きずられてようやくやって来た透くんの病室。病院内では静かに、との事だったのに扉を盛大に開けて大声を張るあたしに最早忠告の言葉など入らない。
「おっ、絵里子。よく来たな。」
透くんは昨日まで意識がなかったのが嘘の様に元気そうにベットの上に座っていた。…約一週間ぶりの透くんは元から細いのにすっかり痩せていた。
「透くん…!久し振りだね!会いたかったよ!」
「おっと…大胆だな。でも俺もだよ。」
思わず透くんに飛びついてしまう。透くんはそんなあたしをほっそりとした腕で受け止めて、骨ばった手で撫でてくれる。
「絵里子…お前痩せた?」
「なっ、透くんに言われたくないよ!透くんだって痩せ過ぎだよ!」
「俺は良いんだよ。物食えなかったから栄養は点滴で入れてるから。お前…そんなに不安だった?食事が喉を通らないくらい?」
「いやいや!ちゃんと食べてたし!」
「ははっ、どうだか。栄養失調にだけはなるなよ?それこそ死んじまうぜ。」
透くんはそう笑い飛ばして言う。…透くんだ。久し振りの透くん。…よく成功率の低い手術に耐えたね。
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