♡短編恋愛集♡
「確かにね、知ってますよ? ツーブロック。でもさ、ロングヘアの下から何でツーブロックが出てくるのっ! 女の子でしょ~?」
 そのあわてようにマスターまでも笑ってやがる。
「人は見かけによらないだろう? 雄太郎」
 その上、余裕で煙草ふかしてる。
「女の子でこんなんでいいんですかっ!」
「義妹だし」
「いもうと~!」
「義兄がお世話になってます」
 脱力・・・・・まぢかよ?
「カミさんの妹。たまにこうやって飲みに来るんだけど、雄太郎と会うのは初めてだよな? いや~馬が合うんじゃないかとは思ったけど、かなりいいね~、キミ達」
「冗談でしょ~? 私についてこれる男なんてそうそういないわよ」
 寂しげにけど明るく言い放つミク。
 ちょっとだけカチンときた。
 短時間の会話だけだけど、普通の男と僕を判断したってことに。『普通』という隠れ蓑に隠れて『個性』を隠し持っている彼女に。 僕はスミノフを一気にあおった。 そして彼女に少しだけ嫉妬した。僕よりも上手にしかも個性を持って生きている。今、少し一緒に過ごしているだけで、惹かれるものを持っている彼女に。
 今まで付き合ってきた女の子の誰ともダブらない、ミクに目を奪われてしまう。
 知りたい。
 ミクのことが知りたい。
 僕は僕自身の恋心にあおられたのか、よくしゃべりよく笑いよく飲んだ。
 っていうか
 飲みすぎた。
 その間、ミクは一杯のバーボンをゆっくりゆっくり氷を溶かしながら楽しんでいた。
 そう、楽しんでいた。
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