忘れた
ここは経験者の出番だ。


「あのね、オーバーの手の形は、こうじゃなくて、こう」


自分の手でやってみせる。


「こうか?」


勇介はあたしの真似をしたつもりだろうけど、全然違う。


「勇介、ちょっとしゃがんで」


「え? あ、はい」


素直に従う勇介。あたしは後ろから勇介の大きな両手を取った。


「こう」


ついでだから、アンダーも教えておこう。


「アンダーは、手を振っちゃダメ。こう、ボールを拾いに行く感じ」


分かった?と聞いても返事がない。その代わり、勇介は恥ずかしそうに言った。


「奈緒、近い…」


「え?」


確認すると、あたしは勇介を包み込むような体制になっている。まるで、後ろから抱きしめているようだ。


「わっ、ごめん」


慌てて離れる。


わー、気まずい。何か喋らないと。


「わ、分かった?勇介」


すると、勇介はいつものくしゃっとした笑顔で言った。


「バッチリ」

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