サヨナラなんて言わせない
スーパーでは食料品を中心に品物を揃えていく。
口にしやすいゼリーやプリン、果物など、少しでも食べてもらえそうなものを一つ、また一つと手にする。
他にも数日は買い物に出なくても困らない程度の食材を買い込むと、
気が付けば両手にずっしりと重みを感じるくらいの荷物になっていた。

この重みが彼女との繋がりを示しているような気がして嬉しい。

一方的な想いだとわかっていても、今の自分にはそんなことですら小さな幸せを感じられた。



マンションまでの帰り道、辺りに涼子がいないか視線を彷徨わせる。
残念ながらどこにもその姿は見当たらない。
小さく溜息を零すとマンションの中へと入った。


部屋に入り買ってきた物を整理していく。
いつ彼女が帰ってきてもいいように。

片付けを済ませ買ってきたもので自分も軽めの食事を済ませる。
そうして一通りの準備を終えると、俺は再び部屋を後にした。

マンションの前まで出ていくと、すぐ隣にある植え込みに軽く腰掛ける。
もしかしたら彼女がこの辺りを通るかもしれない。
その時は引っ張ってでも連れて帰って休ませる。

帰ってくる保証なんてどこにもないのに、俺は待ち続けることを決めていた。
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