もうひとつのエトワール


「菜穂の嘘ほど見抜きやすいものはないよな。素直で正直だから、思っていることがすぐ顔に出る」


自覚のなかったことだけに、思わず顔に手を当てると、彰良が一度クスッと笑ってから表情を改めて問いかけた。


「何があったんだ。店の経営が芳しくないのか?それとも、棗と喧嘩でもしたか?」

「そんなんじゃないよ。店はおかげさまで売り上げも一定に保ててるし、棗との喧嘩なんてしょっちゅうだしね」


お皿の上のスパゲティをフォークでつつきながらの答えは、自分でもわかるほどに声に力がこもっていない。

もちろんそれは彰良にも伝わってしまっていて、フォークから手を離して完全に話を聞く体制に入られると、適当に口から溢れていた言葉がフツっと途切れた。


「……彰良はさ、なんであたしと付き合ってくれてるの?」
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