「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
「ごめんね…
やっぱり、話すの辛い?」

僕は、小さく首を振る。
それは見栄ではなくて…辛いというのとは本当に少し違うから。
あの頃の思い出はいやなものじゃない。
それにきっと、村の人達の反応はごく当然のことで…
彼らばかりが悪いというのではないこともよくわかってる。
ただ…幸せに育ってしまったからこそ、皆の心変わりが殊更酷いものに思えたってだけなのかもしれない。
好きだった人、大切に想ってた人達を恨んでしまうのは不愉快だ。
自分が酷く醜い人間に感じられる。
……辛いんじゃなくて不快なんだよ、きっと。



「そう…じゃあ、いつからそんな風になったの?」

「割りと最近だよ。
僕はずっと自分のことをごく普通の人間だって思ってた。
だって、何一つ変わった所はなかったんだから…
……こんな日が来るなんて、考えたことさえなかった。」



(……僕は何て馬鹿なことを言ってるんだろう。
当たり前だ…こんな身体になることを考える者なんているはずないじゃないか…)

僕は自分で話したことに、自嘲した。



「急にそういう身体になったの…?」

アズロはよほど僕の身体に興味があるのか、僕の自嘲にも気付かず、納得する答えを得るまで何度も質問を重ねてくる。



「そうだね……
急…だったかもしれない。
何年前だったかな…
母さんが僕の肩を叩こうとした時だったかな…おかしな具合になったんだ。
でも、二度目にはなんともなかった。
だから、母さんもその時は手元が狂ったかなにかだと思ったみたいだよ。
……けど、そうじゃなかった…
それから数日した時、また同じようなことがあった。
今度は思い違いじゃないってことが、母さんにも僕にもはっきりとわかった。
何度やってみても、母さんの手は僕の身体をすり抜けたんだ。
……そしてそれからはもう……誰も僕には触れることが出来なくなった。」

「そうだったんだ…
それで、お母さんはそのことをどう言ったの?
村の人には、すぐに話したの?」

アズロの質問が心に刺さった。
その頃のことを思い出すと、胸が痛くなってくる。
何も酷いことをされたわけじゃない。
……その逆だ。
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