甘い女と月の男
「あ、あの、さっきはありがとう。すごく助かった…」

「何ーお礼なんていいのにー。だって僕たちのせいで凛華ちゃんが悪口言われたんだよ?だから僕たちが助けるに決まってんじゃん!」

そう言って郁君はにっこり笑った。



教室に戻った後。

3人でさっき起こった事を話していたら。

「あの…。東城凛華さんはいらっしゃいます?」

という声が聞こえた。

誰だろう?

見た感じこの学年では無いと思うけど…。

あ、胸元のリボンが赤だから先輩かな?

「私に何か用ですか?」

教室のドア付近まで行ってみると、そこには4人の女の先輩がいた。

その内の1人は、学校内で1、2を争う美人で有名な先輩だった。

そんな先輩が私に何の用かな?

「少しお話したい事がありましてね。ちょっと付いてきてくれる?」

言われるがままについていくと、辿り着いたのは空き教室だった。

「単刀直入に言うけど」

あの美人の先輩が怖い顔で口を開いた。

「ムーンボーイズに近づかないで」

……。

え?

なんで?

「どうして先輩にそんなこと言われなきゃならないんですか?」

私、こういうの慣れてるから。

昔から呼び出しなんて腐るほどあったし。

もうなんかたてつくのも全然怖くない。

「…、そ、それはっ…」

「ほら、先輩。誰がムーンボーイズがあなたのものだって言ったのですか?」

少しきつい口調で言うだけで先輩は黙り込んでしまった。

あーあ、この人、顔だけじゃん。

男の子って、所詮顔しか見てないんだね。

すると、周りにいた友達らしき人たちが私を罵倒してきた。

「お前、ちょっと顔が良いからって調子乗ってんじゃねーよ!」

「あんたがムーンボーイズのそばにいる資格なんてどこにもないんだからね!」

「じゃあ、先輩?あなたがムーンボーイズのそばにいる資格はどこにありますか?」

ほらね。

所詮顔だけ。

さあて、もう用はないし。

教室に帰ろ。

「じゃあ、先輩。もう用はないと思いますので。帰ります」

私はすたすたと空き教室から教室に帰った。

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