世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話

「いいよ。でも、お詫びに教えてよ。お嬢様学校がどんなとこか。俺はずっと公立だったし、想像もつかないんだよな」

「そんな、変わらないんじゃない?」

「そうかぁ?」

 彼の疑わしそうな目つきには、からかうような色が紛れている。
 ああ、そうですよ。どうせ私は世間知らずですよ。

「何が聞きたいの?」

 ため息混じりにそう言うと、彼も首を傾げた。具体的に何かあった訳じゃないらしい。

 女子高がどうかってより、お嬢様学校がどうかが聞きたいんだよね? 女子高ネタでありがちなのは、お姉さまごっこみたいなのとか、女の子同士の恋愛とかだけど……。そう言うのも実際あったし、面白いかもしれない。でも、お嬢様学校的なエピソードなんだよね?

「お金持ちの子が多いかとか、そういうの?」

「そうそう!」

「うちは、割と普通の家の子が多かったよ」

「まさか」

「……普通の中では、少しだけ裕福な家って感じ?」

「さくらの中で、少しだけ裕福な家って感じたエピソードとか教えてよ」

 彼の言葉が私の記憶の扉をそっと開いた。
 私は遠い目をして、懐かしいあの頃の思い出を探り出した。

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