志ーこころー 【前編】─完─
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蔵からでてきたところに、男がいた
よほど急いでいたらしい
呼吸が乱れ、その額には汗が浮いている
土方「……山崎……」
山崎と呼ばれた男は、息を少し整えてから、いっぺんに言った
山崎「……副長、その志乃って坊主、長州の間者でも、ましてや長州出身でもありません……!!!!」
土方「……そう、か……」
妙に冷静な自分の声
でも
身の内では大きな後悔の念が襲っていた
とんでもないことをしたんだな……こんな子供に……
謝っても、謝っても、志乃の心は癒されることはないだろう
そう思うと、唇を噛まずにはいられなかった
山崎「……それと……」
土方「まだなにかあるのか……?」
山崎「……その坊主、どこをどう探しても……出身がわからないんです……」
はぁ、と溜め息をつく山崎
山崎「こんなんなって探り入れとんのに……生まれも、親も、ましてや住んでいた場所や目撃者すらでてこないんですよ……?」
土方「……こいつは……」
こいつは……何者なのだろうか……
間者ではなかったにしろ、正体不明のこの子供はなんなのだろうか……
考えれば考えるほど分からない
土方「山崎…。」
山崎は土方の腕の中の志乃を見て、思わず息を呑んだ
そして、土方が何をいいたいのかわかったのだろう、
山崎「御意、」
とだけ言うと、桶に水をくみ出した