CHECKMATE
検査室から車椅子に乗って病室へと戻る途中の絵里と、エレベーターホールで出くわした2人。
絵里は2人の姿に気付くと、震える手で必死に挨拶をしようとしている。
そんな絵里に千葉は軽く片手を上げ、夏桜は愛らしく手を振った。
夏桜にとって同世代の同性と会話する事自体限られており、世間の目から隠れるように自宅に籠っていた絵里もまた、人と接する事が皆無であった為、お互いに惹かれ合うモノがあるのだろう。
しかも、夏桜もまた身体に病魔を抱えている。
同じ境遇の絵里に夏桜は、親近感を覚えていたのである。
看護師から絵里を引き受け、3人で病室へと向かった。
「夏桜さん、今日からパルス療法(メチルプレドニゾロン/日投与)が始まったの」
「ホント?」
「えぇ。あと、何て言ったかな?シクロ……何とかって言う静注療法も」
「シクロホスファミド、ね?ループス腎炎の治療なら妥当だわ。ステロイド剤は感染症を起こし易いから、今後は気を付けないとね」
「えぇ、先生もそう言ってた」
「口腔内潰瘍はどう?手術する事になった?」
「それはまだ何とも言われてない。酷くなる前に取って貰った方がいいんだけど、まだ大丈夫だよね?」
「えぇ、大丈夫よ。潰瘍よりも腎臓の方が今は治療をすべきだし、肺や心臓の負担を軽減させるのが最優先だから」
「夏桜さんに言われると、本当に安心出来る。やっぱり、言って欲しい言葉を言って貰うと、治療する勇気も湧くしね」
「私なんて、大した事言ってないのに……」
謙遜する夏桜を誇らしげに見つめる絵里。
絵里からしたら、知り合いの夏桜が、腕の立つ医者だと言う位置づけなのかもしれない。