CHECKMATE


自宅へと到着した千葉と夏桜。
千葉はリビングのソファに倒れ込んだ。

ほのかの気を惹く為に濃いめの水割りを何杯も飲んだのである。
元々酒に強い千葉だが、さすがにぐったりと疲れた色が隠せないでいた。

そんな千葉に水の入ったコップを差し出す夏桜。
心配そうに顔を覗き込んでいる。

「悪いな」
「………別に」

千葉はコップを受取り、水を口に含む。
すると、

「男の人って、あぁいう風に口説くのねぇ」
「……へ?」
「音声だけだったけど、口説き文句のオンパレードだった気がする。……違う?」
「それは…………仕方ないだろ、仕事だし」

千葉のジャケットのボタンに精巧に仕込まれていた盗聴器。
どこで何が起きるのか分らない為、状況を把握する為に仕込ませたものである。

その盗聴器が拾った音声を聞いていた夏桜は、普段の千葉からは想像がつかない程の台詞と声色に、ほんの少し違和感を覚えたのでった。

「もしかして、嫉妬してるのか?」
「はっ?……まさか、そんな筈ないでしょ!」
「そうか?…………俺にはそう聞こえるが」
「フッ、勝手にそう思ってればいいじゃない。私はお風呂に入って寝るわ!おやすみっ
「…………あぁ、おやすみ」

急に思わぬ事を言われて動揺した夏桜。
今まで“嫉妬”という感情に支配された事が無い。
だから、自分が感じた違和感が何なのか、分らない夏桜であった。

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