CHECKMATE
「何の真似だ」
「っ………、ごめんなさいっ」
千葉に力強く握られている腕を引き抜こうと必死に力を込めると、千葉は立ち上がり、悲しい表情を浮かべた。
「痛みが酷くて眠れないなら、俺に声をかけろ」
「へ?」
「刑事と一つ屋根の下に住んでるのに、薬に手を出すほど追い詰められているのか?俺には隠し事するなと言ったはずだ。不本意かもしれないが、いつでも俺を頼れ。俺に出来る事なら何でもしてやるから」
「…………ん?」
千葉の言葉がいまいち理解出来ない夏桜は小首を傾げると、
「だから、…………頼むから、薬に走るな」
「…………何言ってるの?」
「俺の言ってることが理解出来ないのか?」
「…………………ん」
本当に見当もつかない夏桜は唖然としていると、千葉は真剣な表情でグッと顔を近づけて来た。
男性にしては長い睫毛。
程よくクールなイメージにアレンジされた髪からは、ほんのりと青りんごの香りが漂ってくる。
髭も剃られた口元はキュッと結ばれ、不意に彼とキスをした情景が思い出された。
思わず恥ずかしくなって俯こうとすると、顎をグイっと持ち上げられた。
「俺の目を見ろ」
「ッ?!」
こんな状況で見つめ合うだなんて、夏桜にはハードルが高すぎる。
今にも口から心臓が飛び出そうであった。
早鐘を打つ鼓動を悟られまいと、ぎゅっと固く瞼を閉じると。
「頼むから、俺の目を見てくれ」