CHECKMATE
明らかに焦る夏桜を千葉は見逃さなかった。
「仲のいい夫婦を装うんじゃなかったのか?」
「それは、………そうなんだけど」
「なら、俺も一緒の方が好都合ってもんだろ」
「……………そうね」
苦笑する夏桜に対し、千葉は至ってクールに珈琲を口にする。
「じゃあ、そういうことで。………珈琲冷めるぞ?」
千葉は何事もなかったかのように飲みかけカップを手にして、給湯室を後にした。
「はぁ……、何とかなるよね?」
夏桜は、自然と心の声が漏れ出していた。
***
「今から鑑定結果を貰いに科警研に行くが、顔を出すか?」
「え?……あ、うん」
夏桜の瞳は僅かに揺れた。
そんな表情一つも千葉は見逃さなかった。
本来ならば、飛び上がるほど嬉しいだろうに。
けれど、今の夏桜の心境はそうではないらしい。
何が彼女をそうさせているのか、千葉には分からなかった。
ただ、夏桜を注意深く観察することで、今まで気づかなかった些細な表情も汲み取れるようになっていた。
****
「今日もマカロンを買ってくか?」
「………」
千葉と夏桜を乗せた車は科警研へと向かっていた。
千葉がハンドル片手にルームミラーで後部座席に視線を向けると、夏桜はぼんやりとスモーク越しの車外を眺めていた。
「おい、聞いてるか?」
「えっ?あ、ごめんなさい。考え事してて……」
我に返った夏桜は、ミラー越しに苦笑してみせた。