CHECKMATE


「何がおかしい。俺、変なことでも言ったか?」
「ううん、そうじゃなくて……。一輝ってホント、優しすぎる」
「そぉかぁ~?そんなことないだろ」

夏桜の言葉に破顔し、視線を逸らした。
そんな千葉を安心させるために、夏桜は気の利いた嘘を吐く。

「排卵誘発のタイミングが合わなかったみたい」
「それって、どういうこと?」
「うーん、そうだなぁ……。要するに、採卵する前に排卵しちゃったってことよ」
「あぁ~………なるほどな」
「だから、一輝も…………暫くはしなくていいから」
「はぁ……、そっか」

明らかに安堵した様子の千葉。
嘘の出張から戻った扱いにしたとしても、千葉にはすべきことがあった。
しなくていいのであれば、それに越したことない。

すると、急に真剣な顔つきになった千葉は、鋭い視線を夏桜に向けた。

「病院にはカメラも設置したし、ある程度の情報も入手した訳だから、あの病院へはもう通うな」
「え、でも……」
「あの病院のカラクリはもう分かってるだろ。それに、裏を取るのであれば方法は他に幾らでもある」
「…………ん」
「無意味に薬を服用する必要は無いし、自分の体を痛めつける必要も無いだろ」
「……………」
「お前の得意分野だから、徹底的に調べたいのは分かる。だが、これ以上あの病院に通う必要は無い。違うか?」
「………………そうかもしれな「そうなんだっ!」
「っ………」

強い口調で言い切られてしまえば、言い訳の言葉すら思いつかない。
夏桜は悔しくて思わず唇を噛みしめた。

体裁のいい言い訳を必死に探していると、ふわりと長い腕に捕らわれた。

「頼むから………、自分の命を大事にしろ」

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