CHECKMATE
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張り込み用に借りた部屋で昼食中の夏桜。
真剣な表情でパソコンに向かう千葉を、チルドカップコーヒーの容器越しに盗み見る。
これまで千葉に何度も抱きしめられたことがあるというのに、今日は何かが違った。
既に数時間が経っているのにもかかわらず、夏桜の胸は疼いたまま。
というよりも、千葉を見れば見るほど胸はざわつきを増していた。
お願い、治まって。
こんな風に浮いている場合じゃない。
今はすべきことが山積みなのよ?
自分が生かされている理由がそこにあるでしょ?
それに………。
例え、自分の気持ちに素直になったとしても、それが成就することなんて絶対に無いのに……。
夏桜は静かに目を閉じて、自分自身に言い聞かせていた。
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幼い頃から本を読むのが好きで、いつしか勉強好きになっていた。
テストで満点を取れば両親は勿論の事、普段話すことも無いような同級生達も興味や好意を寄せてくれ、沢山の人が自然と自分の周りに集まった。
けれど、そんな優越感に浸ることは幸せではないと悟ったのはいつだったかしら?
あれは確か、中学生の頃だったかな?
勉強ではいつも満点だった私も、淡い恋をした。
勉強とは違い、初恋に明確な答えなんて無いのに……。
いつも正解にならないと気が済まない性格だった私は、勉強と同じように初恋にもすぐさま答えを求めるようになっていた。
その当時、唯一仲の良かった友達を連れて、片思いの彼のもとへと向かった。
言いたいことを思う存分言った記憶がある。
けれど今思えば、それは一方的な感情の押し付けで。
数学で例えるなら、基本の公式を無視して、独自で編み出した計算方法が一番正しいと言い切っているようなもの。
子供レベルの思考能力とはかけ離れていた私は、彼の気持ちを無視して『正解』をひたすら迫っていた。