CHECKMATE
夏桜が確認していたモニターには、婦人科の裏通路の画像が映し出されている。
キュア製薬が出入りしているのは、必ずしも表玄関だけとは限らないからだ。
念には念をと睨んでいた矢先、夏桜が見つけたそれとは……。
「人目を盗んでるところをみると、交際期間はそう長くはないだろうな」
『えっ?それって、一輝さん!もしかして、矢沢とダニエルの事ですか?』
「おっ、何で分かったんだ?」
『今さっき、こっちでも確認したところです』
「それは本当か?」
『はい。矢沢が帰宅したマンションに、ダニエルも入って行きました』
「そうか、じゃあ、その裏を取ってくれ」
『はい、了解です』
剣持は千葉との電話を切り、水島と2人でマンション管理室へと向かった。
一方、千葉がいる室内では夏桜が見つけた証拠を基に、同じような状況があるか、日付を追って入念に調べ始めていた。
婦人科の医師 矢沢友美 35歳。
大学病院勤務だった彼女は父親が他界したことを機に、父親が開業した矢沢レディースクリニックを引き継ぎ、今年で3年目。
アットホームな造りが女性患者に好評で、更には地域でも腕がいいと評判な為、初診予約は数週間待ち。
それでも通いたいと願う女性は後を絶たないという。
モニターに映る2人は処置室の方を気にしながらも熱く抱擁し、診療時間外とはいえ、まだスタッフが数名いる時間帯にも関わらず、濃厚なキスをしていた。
思わずモニターから視線を外した夏桜。
恋愛経験が無いのだから仕方ない。
アメリカにいた時はそういった光景を目にするもの日常茶飯事だったが、それも何年も前の話。
日本に帰国する直前の3年ほどは、製薬会社の研究棟の半地下に監禁されていたようなもの。
だから、こういった雰囲気はどうも恥ずかしくて……。
そんな夏桜を気遣い、千葉はさりげなくコマ送りをした。