CHECKMATE


「特殊捜査チーム『S』の軸となれ」
「…………はい?」

夏桜は首を傾げた。

能力を活かすのであれば、新薬の開発や汚染物質の中和剤の研究だとか。

密室とも思える個室に軟禁され、1人黙々とする任務を遂行するものだと思っていた。

所長の言葉は想像を遥かに超えた次元のものだっただけに、唖然としてしまう夏桜。

そんな夏桜のもとに所長はゆっくりと歩み寄る。
そして、夏桜の手に1つのUSBメモリーを握らせた。

「東君」
「……はい」
「元の組織に戻りたいかね?」
「いえ」

夏桜は即答した。
答えは聞かれるまでもなく、決まっていたからである。

『元の組織』
それは夏桜にとって、二度と這い上がる事の出来ない地獄を意味していて、無条件でそれは選択肢に無いと脳が瞬時に判断したのである。

「君のその能力は、君が生きている限り求められる資質のものだろう。実際、私も少なからず君を利用しているのだから」
「所長は私を保護してくれたではありませんか」
「………表向きは……な」
「形がどうであれ、この2年間、私は救われました」
「そう言って貰えると………」

所長は苦笑しながら頭を下げた。
その行動が何を意味しているのか、夏桜には解っていた。

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