CHECKMATE


午前1時半少し前。
1台の高級車が、バー『Moon』の店先に停車した。

運転席からビシッとスーツを着こなした神保が降り、後部座席のドアをゆっくり開ける。
後部座席からは、水島は大きな薔薇の花束を抱え、降り立った。

そして、神保とアイコンタクトを取り、店の中へ姿を消した。

「いらっしゃいませ」

水島は店に入ると店内を見回し、女がいない事を確認した。
そして、カウンター席に腰を下ろし、カクテルをオーダーする。

「ラスティ・ネイル」
「畏まりました」

数分すると、女が姿を現した。

「いらっしゃいませ」
「同じモノを」
「畏まりました」

先程、店内で着ていたドレスの上に華やかなコートを身に纏って。
女は水島に笑顔を振りまき、隣りに腰掛けた。
コートを脱ぐ彼女に……。

「貴女の美しさには劣るけど、私の気持ちだ」

そう口にした水島はそっと薔薇の花束を彼女に差し出した。
一瞬目を見開いた女だが、水島の手から素直に花束を受け取った。

「ありがとう、嬉しいわ」

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