泣きたい夜には…~Shingo~
「こんな時、医者でも男は無力なものだな…お義母さんの方が冷静だなんだから、情けないやら…
とにかく母子共に無事でいてくれれば後はもう何もいらない」
先生は祈るように呟いていた。
タタタタ…
こちらに向かって走る足音が聞こえてきた。
その音は次第に大きくなり、こちらに近づいて来る。
足音の主は、分娩室の前まで来ると、俺と向井先生を見た。
「ひとみ」
「浅倉、お前…どうして」
向井先生は困惑した様子でひとみを見つめた。
「産婦人科から小児科に未熟児対応の応援要請があったので私が参りました」
厳しい表情のひとみは頭を下げ、足早に分娩室に入ろうとすると、
「お前、俺の子供助ける自信はあるのか?何かあった場合、後期研修中だからなんて言い訳は通用しないぞ、わかっているのか?
後悔したくなかったら今すぐ別のドクターと交代しろ!!!!」
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